AkaiKKR Outputファイルの解説
ここでは、計算モードを”go”と指定したときのOutputについて解説する。
Outputファイルの構成
Part1 計算パラメータ及び読み込まれたデータ
画面上あるいは保存先のファイルにOutputが表示される。
6-Nov-2022
22:59:50
meshr mse ng mxl
400 35 21 3
まず、日付と時刻が表示される。これは計算開始時刻である。 続くそれぞれの意味は、次のようになる。
- meshr : 動径方向の座標のメッシュ数
- mse : 複素積分のエネルギーメッシュ数
- ng : チェビシェフ展開の次数
- mxl : 考慮される最大の散乱角運動量で、単位は$\hbar$
続けて、Inputとして与えたデータが表示される。このデータやキーワードの意味はInputファイルの解説で詳細に記述しているので、参照されたい。 Inputファイルの解説ページ
data read in
go=go file=data/fe
brvtyp=bcc a= 5.27000 c/a= 0.00000 b/a= 0.00000
alpha= 0.0 beta= 0.0 gamma= 0.0
edelt= 1.0E-03 ewidth= 1.000 reltyp=nrl sdftyp=mjw
magtyp=mag record=2nd outtyp=update bzqlty=4
maxitr= 50 pmix= 0.02300 mixtyp=tchb-brydn
ntyp= 1 natm= 1 ncmpx= 1
part2 複素エネルギー経路
その後、複素エネルギー経路がn(ewidth,edelt)の組で表示される。Inputファイルの解説ページで述べたように、この2つの値が適切かどうかが計算の成功に密接に関わる。
積分範囲が妥当かどうかチェックするには、ewidthの値とコア状態のエネルギー(のちに出力されるcore level (spin up )core level (spin down)の値)を比べてみるのがよい。具体的には、出力されているフェルミエネルギーの値と浅いコア状態のエネルギーの差を計算してそれがewidthの値より十分(0.1Ry以上)大きいか、または十分小さいか(0.1Ry以上)を確認をする。これが危なそう、あるいは収束がおかしいとなった場合はDOSをプロットして確かめる。
complex energy mesh
1( -1.0000, 0.0000) 2( -0.9998, 0.0027) 3( -0.9990, 0.0062)
4( -0.9971, 0.0107) 5( -0.9933, 0.0163) 6( -0.9862, 0.0234)
7( -0.9738, 0.0319) 8( -0.9535, 0.0421) 9( -0.9220, 0.0536)
10( -0.8757, 0.0660) 11( -0.8117, 0.0782) 12( -0.7292, 0.0889)
13( -0.6307, 0.0965) 14( -0.5224, 0.0999) 15( -0.4130, 0.0985)
16( -0.3115, 0.0926) 17( -0.2245, 0.0835) 18( -0.1553, 0.0724)
19( -0.1037, 0.0610) 20( -0.0671, 0.0500) 21( -0.0424, 0.0403)
22( -0.0262, 0.0320) 23( -0.0160, 0.0251) 24( -0.0096, 0.0195)
25( -0.0057, 0.0151) 26( -0.0034, 0.0116) 27( -0.0020, 0.0089)
28( -0.0012, 0.0069) 29( -0.0007, 0.0052) 30( -0.0004, 0.0040)
31( -0.0002, 0.0031) 32( -0.0001, 0.0023) 33( -0.0001, 0.0018)
34( -0.0000, 0.0014) 35( -0.0000, 0.0010)
Part3 ポテンシャルデータを保存するファイルと格子の情報
今回の計算では、指定されたファイルがなかったので、新しいファイルが作成された。
file to be accessed=data/fe
created
次の段落では結晶の情報がまとめられている。
lattice constant
bravais=bcc a= 5.27000 c/a= 1.0000 b/a= 1.0000
alpha= 90.00 beta= 90.00 gamma= 90.00
ユニットセルの体積と、マフィン・ティン球(MT球)によって埋められるその体積(volume filling)が68%であることを示している。
unit cell volume= 73.18159(a.u.)
volume filling= 68.0%
基本並進ベクトルを示す。単位はa。
primitive translation vectors (in units of a)
a=( -0.50000 0.50000 0.50000)
b=( 0.50000 -0.50000 0.50000)
c=( 0.50000 0.50000 -0.50000)
ga、gb、gcは逆格子ベクトルを示す。単位は2π/aとなる。
reciprocal lattice vectors (in units of 2*pi/a)
ga=( 0.00000 1.00000 1.00000)
gb=( 1.00000 0.00000 1.00000)
gc=( 1.00000 1.00000 0.00000)
Part4 各サイトを占める原子の情報、格子の対称性、k点の数
まず、サイトの「タイプ」を作る。以下のタイプの位置は鉄によって100%占められている。詳しいことはInputの解説に記載されている。
type of site
type=Fe rmt= 0.43301 field= 0.000 lmxtyp= 2
component= 1 anclr= 26.00 conc= 1.0000
続いて、そのタイプの位置情報、つまり原子の位置を示す。
atoms in the unit cell
position= 0.00000000 0.00000000 0.00000000 type=Fe
チェビシェフ展開をする際のエネルギーウィンドウの情報が与えられる。
- ew : エネルギーウィンドウの中心
- ez : エネルギーウィンドウの幅
***wrn in spmain...eof detected; data generated
***msg in spmain...new ew, ez generated
ew= 0.19997 ez= 1.25000
preta= 0.35542 eta= 0.35542
対称操作について
与えられた原子の配置で許される対称操作symopについて記述がある。許される操作に対しては1、なければ0と表示される。
- g : 直接 gerade
- u : 反転 ungerade
nkが既約ゾーン内でのk点数を示す。
symop E C4*3 C2*3 C4^3*3 C3*4 C3^2*4 C2'*6
g 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
u 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
last= 243 np= 19 ngpt= 273 nrpt= 169 nk= 29 nd= 1
part5 原子の計算
今回の計算はポテンシャルエネルギーの値があらかじめ与えられていなかったので、原子のLDA/GGA計算が行われる。反復計算の回数が記述される。以下の記述では15回で収束したことがわかる。
atomic potential generated
itr= 1 rms error = 0.245
itr= 2 rms error = -0.412
...(途中省略) ...
itr= 15 rms error = -6.237
interval= 15 cpu time= 0.00 sec
nuclear charge=26.00
energyに求まった原子のエネルギー準位が書かれる。単位はRyになる。
nl cnf energy
-----------------------------------
1s 2.000 -508.5203
2s 2.000 -59.2074
2p 6.000 -51.1807
3s 2.000 -6.8027
3p 6.000 -4.4563
3d 6.000 -0.6696
4s 2.000 -0.4930
part6 その他の情報
record 1 will be overlaied by input and
record 2 will be replaced by new output.
core configuration for Z= 26
state 1s 2s 2p 3s 3p 3d 4s 4p 4d 5s 5p 4f 5d 6s 6p 5f 6d 7s
up 1 1 3 1 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
down 1 1 3 1 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
record1でレコードはインプットポテンシャルに置き換わる。2番目のレコードは計算で得られた新しいポテンシャルになる。 ポテンシャルファイルの構造は、バイナリデータからなる2個のレコードを含む。
- record1 : 一つ前の計算で得られたデータ
- record2 : 最新の計算で得られたデータ
Inputファイルにおけるrecordキーワードと対応しているので、Inputファイルの解説を以下に引用する。
recordはポテンシャルデータの利用に関するキーワードである。異常終了などで計算結果が失われてしまわないように、最新の計算結果と、その一つ前のバックアップの、二組のデータが常に保存されている。
- init : 新規ポテンシャルデータ(与えられた原子配置からポテンシャルを計算して利用する)
- 2nd : 最新のポテンシャルデータから計算を続ける
- 1st : 一つ前のデータから計算を続ける
core configuration以下は、コア準位の占拠数である。
part7 反復計算開始
***** self-consistent iteration starts *****
Fe
itr= 1 neu= -2.5047 moment= 4.0909 te= -2523.19969054 err= 0.502
itr= 2 neu= -1.6328 moment= 2.5475 te= -2522.86071488 err= -0.371
itr= 3 neu= -0.3261 moment= 2.6308 te= -2522.80866273 err= -0.443
itr= 4 neu= 0.0541 moment= 2.5226 te= -2522.80177581 err= -0.367
itr= 5 neu= 0.0943 moment= 2.5160 te= -2522.80050661 err= -0.335
itr= 6 neu= 0.0459 moment= 2.4553 te= -2522.80806361 err= -0.454
itr= 7 neu= -0.1653 moment= 2.2229 te= -2522.81662663 err= -0.640
itr= 8 neu= -0.3538 moment= 1.9560 te= -2522.82374971 err= -1.132
- itr : 反復数
- neu : 系内の全電荷数。ゼロなら電気的中性が保たれている。
- moment : 系の磁気モーメント($µ_B$)
- te : 全エネルギー(Ry)
- err : インプットとアウトプットポテンシャルの差のノルムの最大値。対数。マイナスに大きくなっていくとエラーは小さくなっていくことになる。
part8 反復計算収束
itr= 46 neu= -0.0001 moment= 2.1598 te= -2522.81762151 err= -5.193
itr= 47 neu= -0.0001 moment= 2.1598 te= -2522.81762150 err= -5.557
itr= 48 neu= -0.0001 moment= 2.1598 te= -2522.81762150 err= -6.104
interval= 48 cpu time= 0.31 sec
sdftyp=mjw reltyp=nrl dmpc= 0.10000
Fe
itr= 48 neu -0.0001 chr,spn 8.0000 2.1598 intc,ints 1.0307 -0.0270
rms err= -6.140 -6.104
ef= 0.7686596 0.7779665 def= 5.0213887 17.8605662
band energy= 4.763028241 total energy= -2522.817621496
magnetization= 2.3210 T
今回はintervalにもあるように48回の反復計算で収束した。設定したerrorよりerrの値が小さくなったとき、反復計算は正常に終了する。設定したmaxitrの回数反復してもerrが十分小さくならない場合は、計算が打ち切られる。
- intc, ints : 格子間隙に溜まった電子数とスピンモーメント
- ef : フェルミレベル(up、down)
- def : フェルミエネルギーでの状態密度
- total energy : 全エネルギー(Ry)
efが2つの値を持つのは、これがスピンの向きによって異なるからである。マフィン・ティンの平らな部分を原点と取っているため、エネルギー原点がアップとダウンで差が出る。
part9 各サイトのローカルな情報
*** type-Fe Fe (z= 26.0) ***
core charge in the muffin-tin sphere =17.9774112
valence charge in the cell (spin up ) = 0.19393(s) 0.19656(p) 4.19816(d)
valence charge in the cell (spin down) = 0.20117(s) 0.22849(p) 1.97357(d)
total charge= 24.96929 valence charge (up/down)= 4.58865 2.40323
spin moment= 2.18542 orbital moment= 0.00000
orbital current (up/down)= 0.00000 0.00000
core level (spin up )
-507.0825055 Ry(1s) -57.8242188 Ry(2s) -49.7860958 Ry(2p)
-5.4714121 Ry(3s) -3.1285211 Ry(3p)
core level (spin down)
-507.0728003 Ry(1s) -57.7222519 Ry(2s) -49.7063113 Ry(2p)
-5.2798012 Ry(3s) -2.9425195 Ry(3p)
valence charge in the cellはマフィン・ティン球内の価電子の角運動量成分を示す。
total chargeがFeの総電子数26と一致していない。これは、格子間隙位置にも電子が溜まっているためである。
valence chargeはマフィン・ティン球内の全価電子数を示す。
spin momentはマフィン・ティン球内のスピンモーメントを表す。
part10 各サイトのローカルな情報 超微細構造
hyperfine field of Fe
-274.068 kG (core= -219.153 kG valence= -54.915 kG orbital= 0.000 kG )
core contribution
-18.434 kG(1s) -491.698 kG(2s) 290.979 kG(3s)
charge density at the nucleus
11820.4209 (core= 11814.6730 valence= 5.7479 )
core contribution
10701.4235(1s) 972.7172(2s) 140.5324(3s)
hyperfine fieldは、原子核位置で電子によって作られる磁場を指す。NMR等の共鳴周波数やメスバウアースペクトルに対応する超微細磁場のこと。
charge density at the nucleusは、原子核位置での電子密度を表す。NMR等でのアイソマーシフトに対応している。
part11 計算に関する情報
sbtime report
routine 1 2 3 4
count 864 864 864 96
cpu(sec) 3.60 1.19 1.32 0.13
sbtime reportにおけるroutineは特定のルーチンに関する情報である。時間は実時間×スレッド数となっている。
OS: Linux
Host: ru
Machine: x86_64
numcor: 36
elapsed time 0.38 sec ( 9 threads)
OSや用いられたマシンの情報が掲載されたのち、elapsed timeに計算にかかった実時間と用いられたスレッド数が記載される。